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体験談からペットサロンや飼い主が大災害時にどんな対応をすればいいか気づいたこと

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大震災 ペット 対応 防災 液状化 地盤沈下

東日本大震災を受けて、人が安全に、安心して避難できるようなガイドラインが制定されました。それは人だけではなくパートナーでもあるペットたちにも必要なことです。

現在環境省からは行政や事業者向けに災害時におけるペットの救護対策ガイドラインが発行され一般飼い主向けには人とペットの災害対策ガイドラインが発行されております。

ガイドラインにによると災害時飼い主はペットと同行避難するのが基本となっています。

別々になってしまうと、飼い主が探し回ったりして疲弊し周囲にも悪影響を与え、ペットは強いストレスを感じ衰弱・死亡してしまうリスクが高まります。また、野生化し避妊手術をしていない場合は繁殖してしまう恐れもあります。

東日本大震災以降も、熊本地震や異常気象による西日本豪雨など大災害が起こった時にどのように動くか、どのようなサポートが受けられるかが周知してある自治体とない自治体では避難するときの手間や復興までの時間が大きく変わりました。

3.11のあの日、ペットサロンのオーナーである私が体験したことを基にガイドラインに沿ってどんなことが必要だったかを紹介していきます。

大地震発生時

大震災 ペット 対応 亀裂

あの大きな地震のあった日、私は一人お店でトリミングをしていました。

ちょうどプードルをドライヤーで乾かしているときでした。

揺れ始めてすぐ、電気とドライヤーの電源が落ち、不安になったのを覚えています。

 

少し待ってみましたが収まる気配がない、揺れもどんどん大きくなる。

私は犬をタオルにくるみ、ドッグランへ避難しました。

今思えば、揺れ始めた直後にドアを開けておくことは必要だったなと思います。

★チェックポイント

事業所においては家具や什器が動いたり倒れたりしたときに避難経路を妨げないような接地の仕方を凶慮する必要があります。また、地震に備えて倒れないように固定することも重要です。

小さな揺れの時、又は揺れがおさまった後に、窓や戸を開け、出口を確保しましょう。


当時、お店の二階に別の会社が入っていたため、二階から人が下りてきました。
まだ店内に3匹、犬が残っています。ドッグランのフェンス越しにプードルを手渡しし、制止する声もきかず揺れる店内に戻りました。

大人しい子たちだったので、両脇に一匹ずつ、計二匹を抱え、ドッグランに一匹ずつ放しました。(ドッグランは真ん中の扉で仕切れるため2つに分かれます)

もう一匹を連れてくるためまた店内に戻りましたが、真っ白な頭の中でも、かなり足元がおぼつかなく、何かに掴まりながら移動したという記憶があります。

最後の子をドッグランに連れ出し抱っこしながら、揺れが収まるのを待ちました。

 

時間にすると3分とか、そのくらいだったと思いますが、とても長い時間に感じました。

 

初めての経験で頭が真っ白になり、とにかく「助けに行かなきゃ」という思いが強かったのですが、今考えると、とても無謀だったなと思います。

抱っこしたまま転倒したら犬に怪我をさせていたし、建物と隣接しているドッグランなので、屋根から何か落ちてきたり、外壁が剥がれたりして、ドッグランに放した犬にもし当たっていたら怪我をさせていました。

何より、自分が大けがをして動けなくなったら、この子たちの安全を守る人がいなくなってしまうのです。

 

転倒や転落の恐れがないのであれば、揺れが収まるまでは、犬はケージの中に入れたままにしておけばよかったなと冷静な今なら思います。

当時の私は、「建物が潰れてしまう」という恐怖に駆られていました。つい、いつまでも揺れがやまないような気がしてしまいますが、揺れは必ず収まるのです。

★チェックポイント

あわてて行動すると、転倒した家具類、飛び散ったガラスの破片等でケガをする恐れがあります。

ペットを守れるのは飼い主だけです、自分自身の安全の確保は最優先です。また、日ごろから一緒に避難行動がとれるようにペットがパニックになった時でも落ち着かせられるようにしつけておきましょう。

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揺れが収まり避難行動開始

大震災 ペット 対応 防災 避難場所

揺れが収まってすぐ、私は倉庫から折り畳みのケージを出し、犬を一匹ずつ入れました。

何が起こっても対応できるように、すぐ避難できるようにしようと思い、自分の車をお店の前に移動し、ケージごと犬を後部座席に乗せました。

車に自分の荷物を乗せ、さっきの地震はかなり大きかったね、なんて話をしていると、次の大きな地震がまた来ました。

 

立っていられず、すぐに座り込んだのを覚えています。

見ると、駐車場にいくつか亀裂が入り、地震の揺れに合わせて開いたり閉じたりしています。最大に開いても数センチ、人が落ちるような大きな溝ではなかったものの、落ちたらもう上がってこれないだろうという恐怖が頭をよぎりました。

 

「パン」「パン」と、乾いた音が2回響き渡りました。水道管か何かでも破裂したのでしょうか?隣の道路にどんどん水が溜まっていきます。

ふと車を見ると、車の前輪の下に小さな水溜りができ、あっと思ったころには、タイヤがどんどん飲み込まれていきます。慌てて車に乗り込むも、もう車はバンパーの下まで沈み込み、出せなくなってしまいました。

駐車場の亀裂から水が上がってきたのか、道路側から水がきたのかはよく覚えていませんが、気づけば、足元もいつの間にか水浸しになっていました。

 

 

揺れが収まったころには、周りの風景が変わっていました。

歩道は波打ち、道路は水が溜まり中央分離帯が見えません。

電柱は傾き、信号機は倒れています。

 

家や建物も傾いているとは思いますが、道路が波打ち電柱が傾くと、「真っすぐ」の基準がわからなくなります。とにかく、すべてが異様な雰囲気だったことは今でも忘れられません。

大震災 ペット 対応 防災 液状化 地盤沈下

 

余震が続く中、私たちはとりあえず、何も障害物のないところに待機しよう、ということで話がまとまりました。

学校でも避難場所が校庭だったり、近くの公園だったり、空き地だったり、広くて周りに倒れてくるものが無い場所が指定されていたりしますよね?あの発想です。

 

隣の空き地に移動して待機しようということになり、みんなで移動しました。

もちろん、犬も一緒です。男性に手伝ってもらい、ケージごと一緒に移動しました。

しかし、液状化の影響で、隣の空き地はずぶずぶと足が埋もれていきます。

仕方なく、また自分たちの敷地内に戻ってきました。

風が冷たくなってきたので、犬はまた車に乗せました。

 

二階の会社の外回りに行っていた人たちが徐々に歩いて戻ってきました。

途中、電柱が倒れていたり、電線が垂れ下がってしまっていて会社に車で戻ることができず、歩いてきたそうです。

★チェックポイント

液状化現象や水道管の破裂、道路の亀裂や崩落などで交通が寸断されるなどで移動ができなくなってしまった場合に備えて、ペットも含め家族が5日間過ごせる分は備蓄しておきましょう。

避難場所をその場で相談して決めていますが、正しくは災害への備えとして、避難場所・待機場所はあらかじめ決めておき全員に周知しておくことが大切です。

もちろん、ペットサロンを利用する飼い主にもここに避難しています、という情報は知らせなければなりません。

非常時にペットを入れられるよう、キャリーや折り畳みのケージの用意も必要です。また、日ごろからのクレートトレーニングがとても大切になります。

避難と物資調達の開始

大震災 ペット 対応 避難 ケージ バッグ
周りを見渡してみても、少し離れた周りの様子を聞いても、車でここに来ることはできなそうです。この子たちの飼い主さんは迎えに来ることができないだろう、そう判断した私は、近くの実家に一度戻ることにしました。

水(ペットボトルの買い置き)と車(私の車は前輪半分とバンパーの下まで地面に埋もれてしまい使えないので)を確保するためです。

近くに停めてあるという車に乗せてもらえることになり、歩いて移動することにしました。

 

 

実は私、この時も犬と一緒に移動しようと考えていました。

常に目の届く範囲に置いておきたい、何かあってもすぐ対処できるように、何も起こらないように、絶対何があってもこの子たちを守り抜くために・・・!

そんな使命感でいっぱいでした。

 

それに気が付いた年長者に諭され、一番安全そうな二階に移動させることになり、しぶしぶ了承しました。

なんて冷たい人なんだろう、なんかあったら絶対文句言ってやる、なんて心の中で思いながら(苦笑)

当時の私はまだ20代。状況判断ができていなかったし、今思えば、責任を負いたくないがための責任感にとらわれていたのかなと思います。

大切に思っている気持ちはもちろん本物です。護りたい気持ちも本物。

だからと言って、勢いや理想、感情に流されるのではなく、長い目で見て、全体で見て、時には厳しい判断も下さなくてはいけない。

ここが欠けていた私には、今思えばとてもありがたい助言でした。

 

ちなみに、乾かしている最中に被災してしまったプードルですが、家が近所だったため、すぐにお迎えに来てくれました。

余談ですが、この時迎えに来てくれた女の子は、今うちのお店でトリマーとして働いてくれています。縁というものは不思議で、とてもありがたいものです。

 

いざお店を離れる時。

「もしかしたらすぐに戻って来られないかもしれない」

そんなことが頭をよぎり、もし帰りが遅くなってもなんとかしのげるよう、せめて水だけでも用意したいのに、水は一切水道から出ません。用意もしていなかったので、水の買い置きもありません。ドッグフードやオヤツは山ほどあるのに。

 

二階の冷蔵庫から小さいペットボトルが一本だけ見つかったのを分けてもらい、さらに冷凍庫にあった少しの氷を水に浮かべ、なんとかその場限りのお水は少ないけど用意出来ました。

 

店を出る前にブレーカーを落とし、予備のためにレジの中のお金をもち、お店の入口に自分の携帯番号を書いてお店を出ました。

大震災 ペット 対応 防災 鍵

 

ここでも振り返ると、ブレーカーを落としたのは漏電や火災を防ぐ意味でよかったなと思います。ただ、地震の直後に落としてもよかったかなとも思いました。

レジのお金を持って行ったのは、手持ちのお金が心もとなかったからでしたが、火事場泥棒もあったようなので、やはり貴重品などはもって行って正解だったなと思いました。

また、お店の入口に自分の携帯番号を書いて言った件ですが、それだけでは情報が足りなかったなと今は後悔しています。

私は勝手に、飼い主さんが迎えに来ることが出来ないものと判断して行動していましたが、飼い主さんからすれば、何が何でも迎えに来ようと試行錯誤するものです。

実際、皆さん被災されながらも、その日のうちに3匹とも引き取りに来ました。(残りの一匹はペットホテルでの利用でした)

 

私と入れ違いできた飼い主さんは、なぜ店が閉まっているのか、なぜ人がいないのかわからないまま、せっかく迎えに来たのに繋がらない携帯電話にずっと電話をかけるしかない。

二階からは愛犬の鳴き声がするのにカギがしまっている。

いてもたってもいられない気持ちで、他の事もできないまま時間をつぶすことになるのです。

 

当時、固定電話はもちろん、携帯電話も全然つながりませんでした。

地震の直後に各飼主さん、自分の家族、実家、すべてに電話を掛けましたが、一度もつながることはなく、また、ショートメールで安否確認をする、なんて発想もありませんでした。

電話はつながらなくても、メールやショートメールは送受信できたので、これらを活用すれば飼い主さんと連絡を取ることも不可能ではありませんでした。

 

この時の私は、すべてを自分一人で抱え込み、やりきろうと奮闘していたので、それもよくなかったなと思います。

 

当時に戻れるのであれば、

・店を出る理由

・戻る目安の時間、もしくは避難先

・連絡先(携帯番号、携帯会社、メールアドレスなど)

これらをきちんと張り紙に書いて店を短時間出るか、自分が店に残ることと必要なもの(この場合水)を人に伝え誰かを頼るか、そのどちらかがベストではないかなと思います。

★チェックポイント

犬や猫などを預かるペットサロンの場合、飼い主が引き取りに来ることを考えてあらかじめ災害時にはどうするかを従業員にも利用者にも周知させておく必要があります。

また、当時は運よくショートメールでも連絡が取れましたが回線が不通になることもありますので公衆電話の利用や災害伝言掲示板の利用について災害時のマニュアルに含めておく必要があります。

飼い主はペットサロンが災害時にどういう段取りで動くかを確認して家族で共有できるようにメモなどに記録しておきましょう。


おじいちゃんおばあちゃんと一緒に散歩
こうしてお店を出発した私ですが、乗せてもらうはずの車は、二回目の地震で傾いた電柱の電線が邪魔をして出せなくなっていました。

他のもう一台は出せるところにあったので、一人は隣町の家まで歩くことにし、私は近くのコンビニに水がないか見に行き、その後店に戻る事にしました。

 

コンビニまでの道中ですが、映画のようにショートしたり火花が飛び散るものはなかったものの、切れた電線が所々垂れ下がり、ぐちゃぐちゃの足元や水溜りにも線が入っています。

一緒に歩いている人が詳しい人だったので、電話線か電圧線か教えてくれながら移動しました。

(後でわかったことですが、「線」で見分けるのではなく、電柱には電気を送る電力柱と、通信回線が張られている電信柱とあり、柱で見分けていたようです。)

歩道は盛り上がり波打ち、場所によっては、歩道が腰の高さまで盛り上がっています。

マンホールは突き出て、大きな水溜りも遮ります。

すれ違う人と挨拶はかわすものの、みなショックが隠せません。情報も錯綜しています。

 

普段なら徒歩10分以内の距離にあるコンビニにやっとついた頃には、すでに長蛇の列ができていました。

とりあえず最後尾に並びます。

コンビニでは、停電ながらも、手打ちの計算機と値札で計算しながらなんとか商品を提供してくれていました。

しばらく並んだあと、出てくる人たちの買い物袋に水が入っている気配がなかったので聞いてみると、水はとっくに無く、あるのはお茶とジュースだけだとわかりました。

ちょっと迷いましたが、犬にお茶やジュースを飲ませるわけにはいかないと思い、その場を離れ、店に戻ることにしました。

買うものが決まっているのであれば、並ぶ前に確認すればよかったのですが、頭が回りませんでした。

★チェックポイント

災害時には自治体が現地動物救護本部を設置します。災害時必要な物資なども備蓄してありますので、コンビニなどに駆け込むのではなく自治体の設置する施設に行きましょう。災害の備えとしてこうした施設の場所と連絡先はしっかり知っておく必要があります。


犬の事、店の事、家族の事、友達の事。

状況がまだ飲み込めず、ガチャガチャの景色を見ても実感がわかず、涙もまだ一度も出てきません。

 

そんなとき、携帯電話が鳴りました。夫からでした。一気に涙腺が緩みます。

そのあとはまた電話が繋がらなくなりましたが、それだけで十分でした。

 

ふと、店から5分以内の距離にある自販機の会社が目に入りました。

ダメもとで自己紹介をし、預かっている犬がいることを伝え、もし水があったら何本か買わせていただけませんか?と聞いてみると、快くお水を分けて頂けました。

 

涙腺が緩んでいたので、嬉しくて少し泣いてしまいました。

 

分けてもらったお水を店に持ち帰ると、父が店で待っていました。

やはり、私が留守にしている間に飼い主さんが迎えに来ていたようで、代わりに引き渡しをしてくれたようです。父が到着した時にはしばらく待っていた様子で、私は店に残っていればよかったと後悔しました。

大震災 ペット 対応 防災 災害掲示板

 

父は仕事の移動途中に下してもらったようなので、車がありませんでした。

それでも、夜には家族が迎えに来れるようだったので、そのまま待機することになりました。

 

私は近くの避難所に行くことにしました。

理由は、とにかく寒さをしのぎたかったからです。

安易な考えですが、避難所であれば、こういうときのための準備がされていて、暖かい暖房器具があるだろう、そう思ったのです。

 

この時、犬は断られるだろう、とか、嫌がられるだろう、なんて発想はみじんもなく、逆に、みんなの癒しになるかもしれない、なんてことを考えていました。

結局、避難所に向かおうと歩き始めた時に、迎えに来た飼い主さんと遭遇し、無事に引き渡すことができました。

残っているのは、三日間のお泊り予定の子だけです。

 

あたりは薄暗くなりかけていたため、早く避難所に向かおうとしたときに、父を家族が迎え来ました。予定より早い迎えだったので、私も一緒に実家に行くことにしました。

被災→避難所

と、思い込んでいましたが、このとき実家に帰れたことは結果とてもよかったです。

犬は寒さ対策のため、毛布でケージをぐるぐる巻きにし、実家に停めてある家族の車の中に入れました。

ときどき、暖房をかけたりしてこまめに温度管理をし、朝まで過ごしました。

 

 

後日分かったことですが、避難所にいった人たちは寒さに耐えられず、車に移動したり、家に帰ったりしたようです。日に日に避難所の生活も快適になっていったようですが、やはり初日というものは色々混乱しているものですね。

 

避難所でのペットの問題も、地震から数か月後に知りました。

・動物が苦手

・鳴き声

・トイレ

・一緒に過ごしたい人とそうでない人 などなど

 

私は自分の思い込みだけで行動しようとしていましたが、とても大切な部分が抜けていることに気づかされました。

このあと、私のお店周辺の地域では2か月近く上下水道が復旧できませんでした。

埋立地という土地柄、液状化現象が大きな障害となったのです。

 

★チェックポイント

現地動物救護本部ではペットが受け入れ可能な避難所を案内してくれます。また、近くに受け入れ可能な避難所がない場合は一時預かりも可能です。

飼い主か分からない、連絡が取れないなどの場合、また、放浪動物を保護した場合は、その後の飼い主への返還や新しい飼い主への譲渡のために保護カードというものを記入します。

飼い主とペットの安全確保のため、公衆衛生のために必要なことですので、知っておきましょう。

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最後に

大震災 ペット 対応 防災 心構え

ここまで、地震発生初日の出来事を、振り返りとともに紹介してきました。

やはり記憶に残る出来事だったので、鮮明に思い出せるものですね。

この話を読んで、みなさんが愛犬とどう過ごすか、何を準備するか、非常事態が起きた時に何を優先するか、家族で話し合うきっかけになればいいなあと思います。

※参考リンク

環境省:災害時におけるペットの救護対策ガイドライン

環境省:人とペットの災害対策ガイドライン

消防庁:地震防災マニュアル

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