ワンチャンや猫ちゃんをお迎えするときに、別れを体験することを意識するかと思います。特にお子様がいる場合は、「最期までちゃんと面倒見るのよ」と言い聞かせるのが定番ですね。
ほとんどの場合避けられるものではありませんが、覚悟していても家族のような存在の死はとてもつらいですよね。その悲しみを受け止めきれなくて心身ともに不調をきたし日常に支障をきたしてしまう人も近年増えているようです。
ペット福祉や医療の充実、生活環境の向上により、ペットの平均寿命は右肩上がりです。一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」によると2017年の犬の平均寿命は15.3歳、猫は14.2歳となっております。
中には25歳まで生きて老衰で大往生を遂げたわんちゃんもいます。それだけ長い事寄り添って生きてきているので、徐々に衰え覚悟をしているとはいえ、飼い主の心に穴の開いたかのような喪失感は相当なものになると思います。
ペットの長寿かが進むことでペットロスで悩む人も多くなってきています。まさか、自分はかかるわけがないと思っている人ほど気が付かないうちに不調をきたしていることもあります。
ペットロスの原因や対策、対処方法を知っておくことで、自分がそうなった時だけでなく周りの人がペットロスで辛い思いをしているときにどうしたらいいかが分かります。今回の記事ではペットロスについての知識と解決方法を紹介しますね。
目次
ペットロスとは?きっかけや原因
ペットロス自体は飼育動物の喪失体験といい、死別したり、行方不明になったり、盗難に遭ったりしていなくなってしまうことを指しますが、広義ではそれをきっかけに心身の不調をきたし日常生活に支障をきたすことを指すことが多いです。
ちゃんと言うとペットロス症候群です。この記事ではペットロスとして表記します。
ペットロスの原因
近年ペットロスが増えてきた原因の1つとして、ペットの地位向上が大きいと言われています。大昔は家畜のような使役動物としての扱いでしたが、社会性が成熟するにつれて愛玩動物となり、心の支えや心に傷を負った人の癒しにもなりコンパニオンアニマル(伴侶動物)としての地位を確立しました。それだけ人間にとって大きな存在になりました。
自分との間に何らかの「一体感」を抱いているから
ペットロスの症状
ペットロスで見られる精神的症状で多いのは以下のような症状です。
この症状は鬱の症状と酷似しており、長く続くとうつ病を患ってしまうこともあります。
また、悲しみを受け止めきれず、ストレスで自律神経が乱れさまざまな精神的な症状だけではなく、血圧・コレステロール・尿酸といった様々な数値や癌の悪化や心臓病などの身体的な病の発生や悪化にもつながってしまうケースがあります。
ペットロスを乗り超えるための5つのステップ
ペットロスを解決するまでにかかる期間は何か月くらいか気になるところですよね。平均10カ月と言われていますが、この期間にとらわれてしまってもう9ヶ月目なのにこんなに悲しい、どうしよう、などと焦らないようにしてください。人の感情の大きさは人それぞれです。
ペットロスを乗り越えるためには認めたくないと感じる4つの感情を克服しなければなりません。この感情は乗り越えるのが難しいとされているものでまず自分で自覚することが大切です。
否認
ペットの死を受け入れられずに見て見ぬふりをすること。別れを苦痛に思わせないために、現実逃避をしてペットの死を否定する状態です。
怒り
事故や病気の直接的・間接的原因を作った人や事に対して非難したり暴言・暴力をふるったりする状態です。一時的な気晴らしや満足感を得るためにこういったことが起こります。
怒りの対象が外に向けは、獣医師や動物病院、死因となった病気、事故を引き起こした人、ペット自身など様々です。自分に怒りが向く場合は罪悪感に繋がります。
罪悪感
愛するペットを助けられなかった自分自身に怒りを覚えた場合、自責の念となり、罪悪感を感じます。
病の進行や致命傷で安楽死を決断しなければならない場合や、手遅れになるまで病気に気づいてあげられなかった、自分のお世話が十分ではなかったと感じる場合罪悪感を強く感じます。
抑うつ
抑うつの範囲は、数時間から1日元気が出ないといった軽い段階症状もありますが、心身に重大な影響を及ぼす情緒的にマヒ状態となっている重い段階もあります。
この感情は、数週間~数ヶ月と長期間続いてしまう場合もあり、うつ病の専門家やメンタルクリニックへの受診が必要な場合もあります。
一般的にペットを失った後の感情は否定→交渉→怒り→受容→解決の順で回復に向かうと言われています。
「交渉」は分かりづらいかもしれませんが、「神様、どうか愛犬を生き返らせてください」、のような現実では起こりえないようなお願い事をするようになる段階です。
否認していた現実はとりあえず認めることはできたが、何とか取り戻したいというステージです。これが叶わないとわかると次の怒りに移行します。
ペットロスが引き起こすネガティブな感情は悪い事ではありません、これにとらわれて悲しい気持ちでどん底に陥ったままになっていることが解決の妨げになっています
。
ペットロスから立ち直るためには何か一つ出来ることからやってみるということがとても大事ですので、次に具体的な方法を紹介します。
ペットロスに対する具体的な処方箋
沢山の愛情を注いできたペットが病気や怪我、不慮の事故などで急にいなくなってしまった場合、心の準備ができていた人に比べてそのダメージは大きなものになります。
負の感情に振り回されてしまい、その感情の行き所が誤った方向に向かってしまうと、ペットロスの症状が回復しないばかりか、重症化して克服が難しくなることもあります。
また、周囲の人や家族が「ああしたらどう?」「これやるといいよ」など安易に進めてはいけません。自分が思っていることに対して、精神的支えや協力・共感が得られなあったと感じることがペットロス症候群の症状改善を妨げる最大の要因になります。
飼い主の精神的ダメージの大きさや捉え方、そして出来ることは人それぞれです。何かを進める場合は、まず感情を吐き出させてあげて何ができそうか聞いて本人の出来ることから少しずつ取り組んでいくのが良いと思います。
ペットロスに陥ったときの具体的な対処方法としては、次のようなことをしてみてはいかがでしょう。
- 泣くことを我慢しない、感情に素直になる
- 気持ちが昂ったりして寝れなくなっても焦らない事
- 寝れなくても取り合えず体を横にして休む
- ウォーキングなど軽い運動をしてみる
- 知人や友人に今の心境を話す
- カウンセラーなど有識者に相談する
- 家の掃除や模様替えをして気分転換をする
- お葬式やお墓お作るなど供養をする
- ペットの写真やフィギアなどのペットグッズを飾る
- 今までの写真をアルバムにする
- ペットの身に着けていたものなどをアクセサリーにする
- ペットロスに対して価値観の異なる人とは一時的に距離を置く
- 価値観に共通点があって気持ちの共有ができる人と穏やかに過ごす
- 新しいペットをお迎えする
一人で悲しみに暮れることも大事なステップです。我慢せずにたくさん泣きましょう。そうして落ち着いてきたら理解のある友人や家族に話を聞いてもらうと良いです。それがいない場合は、ペットロス専門の相談窓口に電話をするとよいですよ。
また、新しいペットをお迎えする場合は、ある程度自分の中で折り合いがついてきたり、迎えてみよう、という気持ちになった時にしましょう。解決策だからと乗り気じゃないのにお迎えすると、飼い主にも新しく迎えた子にも辛いことになります。
ペットロス症候群の人にしてはいけない事
- すぐに新しいペットを勧める
- 上にある対処法を無理やりやらせる
- 落ち込む飼い主の気持ちを無視して安易な言葉で慰める
以上の3つは気持ちの整理がついてない飼い主には深く傷つくことになります。
また、ペットを失った悲しみだけで落ち込んでいたり、体調不良になっているのではないかもしれません。
ペットは心の支えでもありますから、飼い主の所属するコミュニティや会社での人間関係などの問題に対する防御壁ともいえる存在で、その壁がなくなった今人間関係の問題でも苦しんでいる可能性もあります。
周りの人が協力してペットロスから立ち直るためにすることはよく話を聞いてあげることだと思います。飼い主の気持ちに寄り添ってあげることが第一歩です。
周りの人は落ち込む飼い主を見て何か声をかけなければと思うでしょうが、
「病気にもっと早く気づいていれば助かったかもしれないけど、しょうがないよね。」「なんでガンなんかになったんだろうね。ドッグフードに問題あったかもね。」
と、飼い主が「責められた」「私が悪いんだ」「私の所為で」ととらえてしまうような慰めの言葉はかけないようにしましょう。罪悪感と後悔が大きくなってしまい立ち直れなくなってしまうこともあります。
ペットロスから立ち直るにもその人のペースがあります。どうしても難しい場合は専門家の手助けを受けるのも解決策の一つです。
ペットロスに関する相談窓口
日本のペットロスに対する福祉はまだまだ充実しているとは言えませんが相談窓口やカウンセリングサロンなども数多くあり、メールやメッセンジャー、ビデオツールなどでも気軽に相談できるものもあります。
また、ペット霊園などでもペットを亡くした飼い主の体験談やエッセイが掲載しているところもあり、気持ちを打ち明けたり、悲しいのは自分だけじゃないんだという確認をすることも大事です。
ペット・ラヴァーズ・ミーティング(PLM)
ペットロス体験者のボランティアの方が匿名でお話を聞いてくれます。動物医療や専門的な知識の相談はできませんが、お気持ちを話したい方のためのホットラインです。
詳しくはこちら
TEL:03-5954-0355
毎週土曜日 午後1~4時
年4回の同じ立場の人同士が互いの経験を語るミーティングがありますが拠点は東京になっています。
http://www.ddtune.com/plm/
日本ペットロス協会
ペットロスに関する情報やカウンセラー養成講座についての情報も掲載されています。電話相談は50分5000円、面談相談は要予約で1回約90分で9000円です。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~petloss/
ペット葬儀・霊園ネット
ペットが亡くなってすぐの時期からペットロスまでの必要な情報や知識がたくさん掲載されています。
全国各地に関連する葬儀社・火葬場・霊園があり簡単に検索できるようになっています。まだペットを飼い始めてすぐの人にもお勧めのサイトです。
ペットロスを癒すポエム集も掲載されています。すごくいいお話なので一度ご覧ください。更新は随時行われています。
ペットロスについてのまとめ
一見普段の生活通りにしている人でもかなりショックを受けていることがあります。実際に聞いた話ですが、愛猫が亡くなった時に、お骨を持ち帰り自分が死んだときに一緒にお墓に入れてほしいと言ったそうです。そういうことを言うような人ではなかったのでとても驚いたそうです。
ペットロスの症状は人それぞれ受け入れ方によって様々です。少し気分が落ち込むだけの人や何もできなくなるくらい重症になり専門家の治療が必要な場合もあります。
周りの人はあの人の時はこうだったからと、一律の対応をするのではなく、その人の気持ちを汲んであげてくださいね。
ペットを失って悲しみに暮れる飼い主も、あの人はすぐに立ち直った、とか考えて焦る必要はありません。自分のペースで出来るところから行動していきましょう。
人前で泣くことは恥ずかしい事ではありません、我慢すると感情は自分に向かって余計苦しくなります。我慢せずに人に聞いてもらったり、ノートに書き出してみたり、ゆっくりでいいので自分の気持ちと向き合って、時間はかかるかもしれませんがペットとの幸せな時間をポジティブな気持ちで思い出せるようにしていきましょう。