愛犬と長く一緒にいると、どうしても老化からくる体の不調は避けて通れません。
筋肉も内臓も機能が低下してきますので排泄行為にも問題が出てきます。
下痢の場合は、なんとなくヤバそう!という意識で対処も早いですが、便秘は意外と見落とされがちです。人間の便秘の場合は、体操をしたり水分や食物繊維を取っていればそのうち何とかなるだろうという感じですが、犬の場合はそういうわけにもいきません。
便秘は犬の場合早く気づいてあげないと危険なことがあります。
特に老犬の場合は思わぬ病気がかくれていることもあります。
早く気づくためにも便秘について詳しく知っておきましょう。
今日は便秘の原因や対処法などを紹介していきます。また、介護が必要になった時のケアの方法も紹介しますので是非ご覧ください。
目次
何日で便秘と判断するかのチェックポイント
通常犬は1日1回以上ウンチをします。引っ越しや家の模様替えなど生活環境の変化によるストレスで1日出ないということも稀にありますが、2日以上便通のないときは便秘と判断して体の各所に異状がないか確認しましょう。
また、便が出ていても、硬く兎の糞のような便がでている場合は便秘の初期症状です。
便秘は食欲不振からくることもあります。食が細くなると便意を催しても便ができておらず排便できないことがあります。この場合は食欲を回復させてあげることが大事です。
すぐに動物病院に連れて行った方が良いケース
排便が5日以上ない場合は「異常事態」です。便が大腸に溜まり機能不全になる「巨大結腸症」という病気を発症している可能性があります。その場合にはすぐに処置が必要ですので動物病院へ連れていきましょう。
排便姿勢をするが、3日間便が出ない状態が続いたら動物病院に連れて行くことをおすすめします。
普段散歩にいくと排便をする犬が1日でもしない場合でも便秘が疑われます。便秘が続き息がハッハッと荒い、痙攣をおこすなどの症状があれば脱水症状を起こしているかもしれません。
嘔吐や震え、痛みなどが見られるような時は、腸閉塞や神経障害、最悪の場合は癌などの病気も疑われます。これらの病気は、致死率が高いので緊急で診察を受けてください。
便が体内に長く留まっていると、腸に水分がどんどん吸収されてしまうので、硬くなって余計排便しにくくなります。固くなる前に排便できるように食事などで水分を多く摂取できる工夫をしましょう。
便秘の症状は便が出なくなるだけではなく、「便が硬くコロコロとした状態になる」「お腹が膨れ上がる」「排便しようとトイレへ行くのに何もせず戻ってくる」なども挙げられます。また、便秘が続くと食欲がなくなることもあります。
室内犬の場合はトイレを毎日確認し、排便チェックをすることが大切です。
庭で放し飼いにしている犬の場合は、同じ場所にウンチをしないことがありチェックが大変ですが、お腹が張っていないかを中心に確認するようにしてください。
便秘の原因となるもの
老犬の場合、体の老化に加え痴呆も始まってくる場合もありますので特にストレスを受けやすくなります。しかし、病気由来の便秘もありますので手遅れになる前に動物病院に掛かるなどしてしっかりチェックしましょう。
水分不足・運動不足の場合
便秘は老若問わず起こるものですが、シニア犬になると筋肉が衰え、運動量の減少や消化能力の低下などで若いときより便秘がちになるので、飼い主が予防に努めることが大切です。予防法については後ほど説明します。
環境の変化によるストレス
犬は臭いや足もとの感覚で自分の排泄場所を認知しています。ですので、周囲の環境ががらりと変わると自分の居場所や排泄場所がなくなったことに不安を覚えストレスを感じるため排泄行為をしなくなることがあります。
この場合はストレスを感じなくするように環境に慣れさせてあげる工夫が必要です。
誤飲
異物誤飲は好奇心旺盛でまだいろんな経験の少ない子犬の時にも多いですが、痴呆が始まり認知能力が低下しても誤飲は起こりますので注意してください。
異物が腸に詰まると吐き気を伴い、便意を催すものの排便ができなくなります。
悪化すると腸閉塞が起こり開腹手術が必要になる場合もあります。
誤飲に気づいた場合はすぐに獣医師さんに診てもらい必要な処置をしてもらいましょう。また、ひもなど細長いものを誤飲した場合、肛門から少し出てくる場合もありますが、お家の人が引っこ抜いたりすることは絶対にやめましょう。
形状や状態が分からずに引っ張ったりすると腸などを傷つけることがあります。獣医師さんに処置をしてもらいましょう。
病気にかかっている
ストレスや運動不足、食生活に問題がなく便秘になることもあります。以下のような大きな病気由来の便秘もありますので注意してください。
・慢性腎不全
腎不全になると血液を正常にろ過できず水分の体への再吸収量が低下し、尿として排泄されるようになります。そのため、体内の水分量が不足し、結果として便秘になります。
腎不全が進行してから便秘という症状が出てきますので、頻尿の段階で腎不全を疑い対処することが大事です。また、食生活はシュウ酸やリンの多く含むものを避け、食物繊維を多くとることが重要ということなので、かぼちゃがおすすめです。
・椎間板ヘルニア・会陰ヘルニアや前立腺肥大
会陰ヘルニアや前立腺肥大は中高年の雄犬や未去勢の犬に多く見られます。脱出した会陰や肥大した前立腺が腸を圧迫し痛みを伴い排便を妨げます。
椎間板ヘルニアはコーギーやダックスフントの様な胴長の犬種に多く足腰に痛みやしびれを伴い排便を困難にします。
・フィラリア
蚊を媒介とする伝染病です。犬糸状虫症とも呼ばれ、フィラリアという寄生虫が成虫になると心臓の右心室にある肺動脈に寄生し血流を阻害します。
主な症状としては慢性的な施期、腹水、喀血、すぐに息が上がる、便秘などがあります。今では予防薬によってほとんど防げます。
もし感染してしまっても投薬や手術によって治療は可能ですので早期発見に努めましょう。
・がんなどの腫瘍
老犬になると良性、悪性問わず腫瘍はできやすくなります。腫瘍の出来た箇所によっては消化器系を圧迫し便秘につながることがあります。
歳をとればとるほど腫瘍は出来やすくなります。日ごろのスキンシップもかねてマッサージでしこりがないか確認しましょう。消化器系は触っても腫瘍自体はわかりませんが、おなかが張っていたり、触ると痛がったりするようでしたら病院で診てもらいましょう。
便秘の解消法5つ
便秘と言っても軽度のものから命に関わる重篤なものまで様々です。飼い主の判断で決めつけてしまうのはいけませんので、医師の判断のもとそれぞれに合った対処をしましょう。
自宅でできる対策をとって様子を見る
獣医師さんから大したことないので様子見てくださいね、と言われるような軽度の場合は自宅でマッサージなどをして様子を見ましょう。
便秘に効くマッサージは、へその周囲にあるツボを刺激してあげます。お腹の真ん中のちょっと盛り上がったところにお臍があり、その周囲1~1.5cmあたりのところには胃腸を整えるツボ、関元(かんげん)、中脘(ちゅうかん)、天枢(てんすう)、があります。お臍を中心にゆっくりマッサージをしてください。
肛門をマッサージするのも効果的です。オリーブオイルに浸した綿棒やシャワーで、肛門の周りを優しく刺激します。
犬のお腹はとてもデリケートなので、強く押すと仰向けの姿勢になることを嫌がるようになりますので優しくしてあげましょう。
動物病院で処置を受ける
老犬が便秘になったらまずはかかりつけの動物病院で診断を受けましょう。症状が大したことなければ日ごろの習慣や個性や体調に合わせて飲み薬など処方してくれます。
処方されるものには以下のようなものがあります。
整腸剤
犬用の軽度の便秘薬などは市販もされています。また量を調整できれば人間用の整腸剤なども利用できます。しかし、人間用の整腸剤を犬に与える時には獣医師の判断を仰いでください。
飼い主仲間の話で「うちの子はビオフェルミンで治ったわよ」と効いたこともあるかもしれませんが、人間と犬の内臓は別のものですので合うとは限りません。
浣腸
長い期間うんちが出ない状態が続いているようなら、浣腸をすることを勧められます。しかし、慢性的になっている場合、浣腸を毎日行うと習慣性が出てしまい、効果がなくなってしまうので、だいたい4~5日から1週間おきに行うよう指導されます。
飲み薬
うんちがなかなか出ない、出すときにかなり痛がっているなどの重度の便秘が続いている場合、整腸剤ではなく、うんちをやわらかくする薬や腸の運動を活発にする薬を飲ませて出しやすくしてあげる方法もあります。
この場合は、医師の指導の基、用法用量を守り、薬の飲み残しを取っておかないようにしましょう。
手術
以上の方法でも排便がない場合は、最終手段として手術をすることになります。手術で体の中にたまったうんちを取り除きます。犬の場合はここまでひどい状態になるケースはめったにないですが、可能性の一つとして頭に入れておきましょう。
特に老犬の場合は、体力の問題も出てきますので、ひどくならないように日ごろから予防策を取っておきましょう。
サプリメントをとり入れる
人間同様、体質改善に酵素や乳酸菌などが含まれたサプリメントをとり入れることも対処法のひとつです。
人間が飲むようなカプセルや錠剤といった形ではなく、粉末タイプのものが多いです。毎日の食事に混ぜれば簡単に与えることができます。
現在の食事内容やドッグフードを切り替えたくない方には、サプリメントがおすすめです。
油を摂取すると便秘にいいというのは本当?
人間の便秘にはオリーブオイルや亜麻仁油・ココナツオイルなど油分を積極的に摂取することは効果があると言われています。オリーブオイルなどにはオレイン酸が含まれており、腸内環境を整え便通を促します。
ちなみに、他にもグレープシードルオイルやフィッシュオイル・ゴマ油などがオレイン酸を含む油として知られています。
しかし、現在化学的にこれらのオイルを犬に与えてもいい、という結論は出ておりません。人間の便秘には効果があると言われますが、先ほども書きましたが犬の胃や内臓は人間とは異なります。
愛犬にオイルを与えるか否かは、獣医師などの専門家に相談してください。
ドッグフードを見直す
老犬で特にドライフード主体ですと、酵素不足や腸内善玉菌の不足が恒常化してしまいます。それを補ってあげるだけでも便秘の改善の可能性は高いといえます。
まずは消化の良いドッグフードを選びましょう。ただし、消化の良いドッグフードは便が柔らかくなることも多いので、下痢気味になってしまうこともあるので、便の始末方法も考えながら調整していくと良いです。
また、ドッグフードに食物繊維を加えることも、便秘解消につながります。
さつまいもやジャガイモなど芋類、ニンジンなどの根菜類が食物繊維が豊富な食材です。
食物繊維を与えるときは、あわせて十分に水分補給をしないと、かえって便が固くなることがあるので、注意しましょう。
水分を摂取しやすくする
犬の平均水分摂取量は、体重5kgに対して200~300ml。体重15kgならば600~900mlが理想的と言われています。
老犬は活動量が少なくなるとともに飲水量も少なくなりがちです。そんな時はドライフードをふやかすなどして、ご飯でも水分量を増やしましょう。
便の水分量が減って固くなって、腸内ガスが溜まるといった隠れ便秘にも注意が必要です。排便の回数だけでなく、便の固さが適当かどうかのチェックも、忘れずにしましょう。
良いうんちとは
体調のバロメーターともなる排泄行為は正常な状態と見比べられることが重要です。
うんちの量はかりんとうくらいの大きさのものが2~3本くらいが一般的な量と言われています。犬種や体格、年齢によっても変わりますので個性に合わせて微調整してください。
固さはつかんだ時に形が崩れないけど、ちょっと力をこめるとフニっとなる程度。
新聞紙などの紙で取り上げたときに少し湿って跡つく感じが良いうんちです。
色はやや濃い目の茶色が良いとされますが、食べるものによって色が変わるので普段の色をよく観察しておきましょう。血が混ざるとどす黒くなります。
老化による便秘
老化により足腰の筋肉が衰えたり関節痛などで痛みがでてくると、今までのような排泄のポーズができなくなったり、ふらついたりする場合があります。そんな時は、後肢を支えるようにサポートしてあげましょう。安定したポーズが維持できると、排泄しやすくなります。
おしっこやうんちが飛び散っても支障がないように、ペットシーツを敷いて準備をしましょう。飼い主も汚れても問題のない服装で行うと良いと思います。
また、愛犬の排尿や排便のタイミングを日誌などである程度把握しておきましょう。
老犬になっても大体排せつのタイミングは変わらないことが多いです。事前に準備ができておくと排泄の解除がスムーズに行えます。
室内での排泄に抵抗を感じる場合は徐々に鳴らしていきましょう。最初はいつもの屋外での場所→ちょっと家に近づいた場所、ベランダなどストレスを受けにくい場所から行い、様子をみながら徐々に室内でも排泄できるようにしていきましょう。
排泄の仕草をしたり、排泄の時間になったりしたら、やさしく声をかけながら愛犬のサポートをしましょう。
排泄ができたら、褒めてあげると「これでいいんだ」と安心します。食べ物などのご褒美をあげるのも効果的です。排泄で身体が汚れたら、濡れタオルや蒸しタオル、低刺激のウェットティッシュでやさしく拭きとり、清潔を保つことは大事ですよ。
動きが鈍くなったり、寝たきりになったら
介護用ハーネスで後肢の力が弱くなったパートナーの歩行をサポートします。股ぐりも開いているので、着用したままでも排泄行動が可能です。排便したいタイミングで歩行などをサポートしてあげると、気持ちよく排便できると思います。
おむつなどで排便を受け止めることもできますが、その場合はカブレたりしないように定期的に確認が必要です。排泄部の周りの毛を短くカットしておくのも清潔に保つ工夫ですのでおすすめです。
排便ができなくなったら
老犬になり老化もかなり進行すると排泄が困難になります。愛犬の状態によって動物病院で浣腸をしたり、肛門付近の便を押し出したりする方法がありますが若いときのようにはいかないので、かかりつけの獣医師と相談し、適切な方法の指導を受けてください。
今回は便秘についてですが、排尿できないと尿毒が溜まってしまい重篤な症状を引き起こしますので尿が出なくなるようでしたらすぐに動物病院へ行きましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?便秘と言っても様々な原因がありますので、一概に腸内環境を整えればよい、というわけではありません。
日ごろの体調管理を日誌にするなどいつもの様子が分かるようにデータ化しておくことは重要だと思います。便秘の裏に隠れる大きな病気を見落とさないようにしましょう。
特に老犬になると、粗相だけでなく便秘も頻繁に起こるようになります。飼い主のサポートが必要になりますが、全部自分だけで行おうと思うと心身の負担が大きくなりすぎて介護疲れを起こしてしまいます。
便利な介護グッズやサービスが多数ありますので病院やペットシッターなど専門家に相談すると良いでしょう。
愛犬といつまでも健康で長くいられるように、かかりつけの獣医師さんと二人三脚でお世話を楽しんでいきましょう。